飯塚氏の場合、故意の殺傷行為ではないことや、京アニ事件などと異なり退院後の身柄拘束の可能性が低いと各社が判断したことが理由かもしれない。ただ、交通事故の加害者は、逮捕状の請求前の段階では「〇〇さん」や「○○運転手」と書く例も多い。しかし、飯塚氏の場合はなぜか「飯塚元院長」という不思議な呼称があえて使われているのである。
世論の疑念を受けてか、讀賣新聞・朝日新聞・毎日新聞など主要各
実は「飯塚幸三容疑者」という表記は、おこなっても別に問題がなかったのだ。
入院中でも逮捕状が出る例も
飯塚幸三氏が多くのメディアで「容疑者」と呼ばれない理由のひとつにもなっているのは、警察側が本人の年齢や事故後の入院などを勘案して「逃亡や証拠隠滅の可能性がない」と逮捕の必要性を認めなかったことだ。
ただ、今年5月8日に滋賀県大津市で起きた交通事故では、保育園児の列に突っ込んだ車両と対向車両の運転手2人が現行犯逮捕(もらい事故であった前者は同日中に釈放)されている。通常、この手の交通事故では、なかば機械的に当事者が現行犯逮捕されるケースが多い。
また、2012年4月に起きた関越道バス事故では、
いっぽう飯塚氏のケースでは、
事故原因の説明も、当初は「アクセルが戻らなくなった」だったのが、事故1ヶ月後になってから「ブレーキがきかなかった」などと一変。車体に異常がないことが確認されたにもかかわらず、自身の責任を否認するようになった。高齢で逃亡の可能性はなくとも、彼が証拠を隠滅する可能性は本当にないと言えたのだろうか。
逮捕をめぐる飯塚氏への処遇は、他の似たような事例に照らして考えればやはり不自然に思える。なお、逮捕令状を出す裁判所では「一般的に社会的地位が高い人間は、逃亡の恐れナシという判断を下します」(『週刊文春』2019年5月30日号)という。