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体制側が語る香港デモ「政府は完全に判断を誤った」「警察はもう限界だ」――大物議員に聞いた

体制側が語る香港デモ「政府は完全に判断を誤った」「警察はもう限界だ」――大物議員に聞いた

2019香港デモ 現地ルポ#3

2019/09/23

genre : ニュース, 国際

note

田北辰 むろん、これは正しい理解ではない。実際にそんなことがあれば一国二制度の原則に反する。しかし、香港政府の説明不足によって、そのような宣伝がなされてしまい、多くの市民の誤解と反対を招いてしまった。

※条例改正案の内容のみならず、林鄭月娥行政長官の姿勢が市民の反発を招いた。写真は6月16日に約200万人が参加した平和的な抗議デモの様子。湾仔付近で撮影 ©安田峰俊

「香港政府は完全に判断を誤った」

――他に要因はありますか?

田北辰 政府側が改正案成立を焦っているように見えた問題も大きい。多くの市民は香港政府の拙速さをみて、北京の中央政府の命令や香港政府による陰謀があるのではないかと考えた。香港政府を信頼しないようになったのだ。

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 近年、香港市民の一国二制度に対する信頼が弱まっていること、すなわち自分たちの意見が(北京の中央政府から)尊重されていないと感じるようになっていたことも重要な要因になっている。

――なるほど。

田北辰 今回、香港政府は完全に判断を誤った。なかでも(大規模な抗議行動が事実上開始された)6月9日、数十万~100万人が反対デモをおこなった当日の夜に、政府側が改正案の審議継続を表明したことの影響は大きい。多くの市民に、民意が無視されているという感覚を与えてしまったのだ。

 抗議運動の動機はいまや、条例改正案問題についてではなく、香港政府が民意を無視したことへの反感に変質している。

 香港政府、さらにはその背後に存在する北京の中央政府が、香港市民の民意を汲み取っていないという思いが強まっているのだ。それが、今回の抗議運動がこれほどのものとなった理由だと考えている。

田北辰。広東語の通訳をおこなった香港中文大学の学生の感想は「けっこう客観的な意見だと思う」とのこと。写真は秘書提供

「暴徒」と「普通の人」と……デモ参加者は3種類

――今回の抗議行動は、事前に許可された平和的なデモや集会に参加する「和理非」と呼ばれる穏健な多数の参加者と、警官隊と激しく衝突する「勇武派」と呼ばれる過激な少数の参加者に分かれています。

田北辰 デモ参加者には3種類の人たちがいる。まず私の見るところ、数百~1000人は極端に暴力的な人々だ。彼らは2016年2月の旺角の暴動など、過去にもさまざまな騒動を起こしてきた。

 旺角暴動の容疑者らは現在、逮捕・起訴されており、一部の者はドイツへ行ったのではなかったかな?(参考記事)。彼らについては誰も同情していない。つまりは「暴徒」ということだ。

9月8日、地下鉄セントラル駅を破壊する「暴徒」の姿。8月末以来、破壊された駅は延べ40箇所にのぼるという ©安田峰俊