文春オンライン

2021/08/09

 かつて中国外交部の日本語人材といえば、王毅や唐家璇(元外交部長)のように、学校で文法と発音をみっちり叩き込んだ、とても「正しい」ロボットのような日本語を使う人物が一般的だった。

なんとホワイトハウスにケンカを売っている中国駐大阪総領事館のツイート。仕事でこんなことをやっている若手外交官には同情しなくもないが、見ていて腹が立ってくるのも確かだ。

 だが、いまやオタク文脈から日本語に親しむ人間が外交官になり、その「軽さ」を買われて公式SNSアカウントの運用を任される時代になった(近年は日本語を学ぶメリットが薄れ、日本語が上手い若者はオタクばかりになったからでもある)。もっともそうした人物でも中国のお役人である以上、いざ命令を受ければ習近平体制下の強硬外交の尖兵として働くわけなのだ。

前総領事、失踪の怪

 もっとも、私はこの26歳オタク外交官による今回の「やらかし」について、多少の憐憫の情も覚えている。なぜなら、一見すると限りなくフリーダムに思える駐大阪総領事館公式アカウントのツイート内容からは、細かく分析するとちょっとキナ臭い内部事情がうかがい知れるからだ。

 オタク外交官が自作の萌え画像をツイートしていた時期は、公式アカウント開設直後の2019年12月25日から2021年5月まで。特に2020年3月~2021年4月ごろが黄金期だ。この時期は他のツイートも政治的な内容がすくなく、パンダのタンタン帰国をはじめ、日中交流に関係したゆるふわツイートが多い。日本人の感覚で見ても「フォローしてみるか」と思わせる内容だ。

やりたい放題だった2020年春のオタク外交官。なんと総領事館の公式アカウント上で、悪の美少女コロナウイルスの恐怖を描く自作マンガの連載を開始。

 ところが、2021年7月ごろからツイート内容がやけにお堅くなり、他の中国公館アカウントのような面白みのない情報が激増する。そして8月に入ると、オリンピック関連の報告ツイートの間隙を縫うようにして、激烈な内容の政治的ツイートをねちっこい口調で連発するようになった。

 この怪現象とおそらく関係していると思えるのが、駐大阪総領事館の人事動向だ。実は同館では、前総領事の何振良が就任1年にも満たない2020年秋(11月中〜下旬)に帰国したまま消息を絶ち、副総領事が半年以上も業務を代行する異常事態が起きている。

 ジャーナリストの吉村剛史氏は『デイリー新潮』に寄稿した記事で、何振良の失踪について政治的理由による拘束・失脚の可能性を指摘している。やがて2021年6月29日、新総領事の薛剣が就任。前任者の何振良がなぜ交代したかは、公式にはまったくアナウンスされていない。