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「言われた本人があんまり怖がってないんですよね」ストーカー行為に“脳がブラックアウト”した女性を追い詰める、警察の“無神経すぎる”一言

『ストーカーとの七〇〇日戦争』より #1

2022/03/08

source : 文春文庫

genre : ニュース, 社会, 読書, 政治, メディア

note

SNSは処罰できない理由

「グループチャットという機能があるんですよね? SNSは。そうすると一対一のやりとりとして認められないんです。通信法では」

 いやだって、一対一でやりとりしてますけど??? 意味が分からない。これだけ酷く汚らしい言葉を大量に投げつけられているのに、ストーカー行為に該当しないんですか⁇ まったく同じ文言がEメールだったら、該当するのに⁇ 信じられない。

 事件が起きたのは、2016年4月のこと。ストーカー規制法はその後改正され、翌2017年1月施行でSNSも「つきまとい等」に含まれるようになった。けれども法律は遡って適用されることは、ない。改正の報道を知ったときの悔しさは、今も忘れていない。

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「はい。現状では法律が付いて行っていない状態です。いずれは法改正になってSNSも認められると思いますが。それで、脅迫罪で事件化しようと思っています」

 事件化?

「警察のほうで検察に証拠を揃えて出すときにね、これは刑事事件ではないと検察にはねつけられないように、きっちり証拠を吟味して出します。警察が提出し、検察が起訴した事件の99パーセントは、有罪になっています。だからこそ間違いや不確かな部分があってはならないんですよ」

 はあ。よく警察小説やドラマなどで有罪率99パーセントの壁とか使われるやつですね。冤罪の危険性が取り沙汰される昨今、“事件化”するのにより厳密な調査を重ねていると。なるほど。ええとつまり、警察はAが違法行為をしたという証拠をしっかり固めて逮捕したいということなのか。

 私としてははやくなんとかしてほしい気持ちはあるけれど、逮捕と有罪という着地を自分が求めているのかどうかすら、よく分からない。なのに、SNSという形式のせいで、ストーカー規制法が適用されないかもしれないと聞かされると、酷く不当な扱いを受けている気がしてくる。

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