それでも、さすがの新幹線のターミナル。駅から少し離れて浅水川沿いなどを歩いても、比較的真新しい住宅が並んでいるエリアもあるし、さらにすぐ脇では造成中の住宅地も目立つ。小学校があったり、古い建物が並ぶところもあるにはあるが、全体的には目下整備が進んでいるニュータウンのような雰囲気が漂っている。
「津軽と南部は犬猿の仲」と言われますが…
そんな八戸駅西口のシンボルは、駅前広場から荒れ地を挟んだ向こう側、FLAT HACHINOHEという多目的アリーナだ。
2020年にオープンしたばかりの新しい施設で、中心となるのはアイスアリーナ。アイスホッケーやフィギュアスケートなどで活用される、“氷都・八戸”を象徴する施設だ。それがつい最近になって八戸駅西口にできたあたり、この一帯が再開発のただ中にあるということを物語っている。
八戸駅のある青森県は、津軽地方と南部地方に分かれる。津軽地方は津軽氏の治めた津軽藩、南部地方は南部氏の盛岡藩と八戸藩。歴史的に見ると津軽氏と南部氏は犬猿の仲。その関係性が根を張って、いまでも青森県内では津軽と南部の対立がある、なんて言われることもある。八戸は、南部地方の中心都市だ。そして、八戸駅はそのターミナルである。
2万石の小藩の城下町からはじまって、工業都市として飛躍した八戸。そうした中にあって、新幹線のターミナルにして八戸の表玄関・八戸駅。今後さらに存在感を高めていくのか、それとも地方の衰退の波に呑まれてゆくのか。氷都のシンボル・FLAT HACHINOHEを前にして、もしかするとこの駅は分岐点に立っているのかもしれないなどと、考えた。
写真=鼠入昌史

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