科学は回り道をしながら進む

最終回

大栗 博司 物理学者

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ビジネス サイエンス

 7月半ば、ルイジアナ州の州都バトンルージュに1泊し、翌朝レンタカーで東へ向かいました。目的地はLIGOと呼ばれる重力波望遠鏡。2017年のノーベル物理学賞の授賞対象となった観測施設です。

 バトンルージュを離れると道の両側は深い森になります。LIGOの私道に入って2キロほどでようやく建物が現れ、レーザー光を通す真空の管が森の奥へ延びていました。

 LIGOの本部は、私が部門長を務めるカリフォルニア工科大学(カルテク)の物理学・数学・天文学部門にあります。LIGOに続いて建設された重力波望遠鏡である日本・神岡のKAGRAとイタリア・ピサ郊外のVirgoは訪ねたことがあるのに、肝心のLIGOに来るのは初めてでした。

 LIGOには直角に交わる2本の腕があり、それぞれ長さが4キロあります。腕の中にはレーザー光を通す真空の管が通っています。

 地球の丸さのために、地面から水平に直線を延ばすと、4キロ先では地表から1メートル以上も浮きます。それを支えるために装置全体が土手の上に設置されています。

 宇宙の中でブラックホールの合体など急激な現象が起きると時空のゆがみが起き、それが波となって伝わっていく。これが重力波です。

 LIGOの直角に交わる2本の真空の管の中では、レーザー光が往復しています。そこに重力波が通ると、レーザー光の干渉縞が変化し、重力波が観測できるのです。

 宇宙の微かな信号を聞き分ける装置は地上の物音にも敏感で、観測施設のあるリビングストンから約3500キロ離れたカナダのセントローレンス湾の潮位変化までも観測データに現れるそうです。重力波を探すには地上の雑音を知り尽くす必要があります。

 重力波の研究は、20世紀前半に始まりました。

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source : 文藝春秋 2026年10月号

genre : ビジネス サイエンス