この夏は、房総の勝浦に出かけた。昨年に続いての家族旅行だ。勝浦は漁港の街。魚がうまい。宿では、カツオ、マグロ、カンパチ、アジ、シマアジ、マダイ、キンメダイに、ハマグリ、サザエ、アワビ、トドメの一撃には、イセエビが出た。
刺身はもとより煮たの焼いたの揚げたの次々に出てくる。2泊の間の朝夕2回ずつの食事の味と量には感嘆させられた。
けれど手放しで喜べない事情もあった。私は食が細いのである。せっかくの新鮮な魚介の数々を、持て余し気味になってしまう。
初日の献立は、先付けが蒸アワビとキュウリとワカメの土佐酢ジュレがけで、そこから前菜、お造りと続いて茶碗蒸しが出た。
日ごろの私なら十分な量である。これだけのつまみがあればたっぷり酒が飲める。勝浦の銘酒といえば「腰古井」や「東灘」がある。いずれも江戸期創業の酒蔵が醸す地酒である。これもうまい、いや、こっちもうまいと、ゆっくり飲めるはずだった。
しかし現実には、茶碗蒸しの後が料理の本番だ。皿からはみ出しそうなキンメダイの姿煮に続いて和牛ステーキとイセエビの木の芽焼きが並べられた。キンメ、イセエビはいわば名物。勝浦に来てこれを食べなきゃ嘘だ。けれど私は食べるのが遅く、流れに乗れない。気持ちは焦るばかりで、完食することに意識を奪われ、心の平衡を失い、食を急ぐほどに酒は進まない。どうしたらいいのか?
締めのご飯物は、なめろうの茶漬けだ。名物のアジのなめろうに刻んだネギや昆布をのせカツオ出汁をかけた茶漬けである。うまいのだ、これが。絶品と言いたい。けれど私は腹いっぱいである。サラサラとお代わりしたいのに、軽く1杯を啜るのが精一杯だった。
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