ファミ通40年の変遷とこれから

林 克彦 ファミ通グループ代表

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 任天堂からファミリーコンピュータが発売されたのが1983年。それから3年後の1986年に、テレビゲーム雑誌としては後発の立ち位置で「ファミ通」(当時の誌名は「ファミコン通信」)は創刊された。多数の競合誌がある中で、ファミ通はほかとは異なる独自の方向性で個性を発揮し、それがゲームファンに受け入れられ、面白がられながら歴史を紡いできたと言える。

大ヒットしたゲーム機「ファミリーコンピュータ」 ©時事通信社

 個性のひとつは記名記事。編集者それぞれがペンネームを持ち、ゲームに対する思いのたけを記名で綴った。主観が前面に押し出された記事が誌面に並び、カタログ的になりがちなゲーム紹介にも書き手の趣味嗜好が表れるため、読んでいて楽しく、多くの名物編集者が誕生した。自分は1994年にアルバイトで潜り込んだのだが、そのころから「アイツには負けたくない」といった意識が芽生えやすい環境であったことも功を奏したように思う。

 もうひとつは、競合誌とは一線を画した、バラエティに富んだ特集記事。ここでも編集者が前面に立ち、時には戦隊モノに扮して爆破ロケをしたり、時には国立競技場を借り切ってゲームキャラクター大運動会を企画したり、時には硬派にゲーム業界に切り込む取材記事も作った。編集者それぞれがおもしろい! と思うことを高い熱量のまま企画にし、それが読者にも伝播していた。読者アンケートの結果に編集部は一喜一憂し、これがいいサイクルになってつぎつぎと名物企画が生まれた。

 こういった特集記事が頻繁に誌面を飾っていたのは、2000年代前半くらいまでだっただろうか。ゲーム産業の成長・発展、コンプライアンスへの配慮、編集者の入れ替わり、Web時代の到来といったいくつかの時代的背景が相まって、ファミ通の誌面も変化を遂げることになる。

 いまのファミ通が編集方針としてもっとも力を入れているのは、表紙を飾るゲームを徹底的に特集することだ。週刊誌ならではの雑多な連載記事は残しながらも、ひとつのゲームを数十ページ規模で多角的に深掘りする特集記事を作り、その号の目玉とする。ゲームにいままで以上に深く寄り添う、コンテンツ誌へと舵を切ったと言えるだろう。

 なぜそういった編集方針へと変化したのか? ひとつは、ゲームの多様化とともにユーザーのリテラシーが上がり、ゲームをプレイするだけではなく、企画や開発の背景、イラストレーター、コンポーザー、声優といった、ゲームを彩るさまざまな情報に興味・関心を寄せる人が多くなったことがある。加えて、ひとつのゲームへの愛着度も大幅に上がっている。ユーザー同士で好きになったキャラクターや世界観、ストーリーについて想いを共有するようになり、関連する商品の購入、イベントへの参加も積極的だ。いまやゲームは買って遊んで終わりではなく、買って遊んで余韻に浸りながら、数年にわたって関連コンテンツを楽しむ時代へと変わった。だからこそファミ通も、そういったユーザーの期待に応え、満足度をより一層高めてもらうための特集を頻繁に作る編集方針へとシフトチェンジした。昔のファミ通らしさを端々に残しながらも、いまの時代のゲームファンがより笑顔になれるような誌面を作る。

 いまのところこのシフトチェンジはうまく進んでいるが、一方でゲーム産業は日進月歩。常に業界トレンドとユーザー動向をウォッチしながら、柔軟に対応していかなければならない。ゲームメーカーとゲームファンの間に我々がいることはいまも昔も変わらないが、そこで果たすべき役割は時代に応じて変わっていくことを肝に銘じているつもりだ。

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source : 文藝春秋 2026年10月号

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