国内の暴力団勢力は近年、減少傾向となっている。2011年までに全国で整備された暴力団排除条例でさらに締め付けが厳しくなり経済的な苦境が続く。バブル景気がピークとなった1989年、約6万6700人だった全国の暴力団構成員の数は、2021年末時点で約1万2000人にまで減少している。
法律による組織の規制は1992年に施行された暴力団対策法が原点とされる。だが、首都圏に拠点を構える指定暴力団の古参幹部はこれまでについて、「暴対法よりも暴排条例の影響が大きかった」と指摘する。
「暴対法が施行された後は、繁華街の飲食店などからの用心棒代の徴収がばれても、中止命令で済んだ。命令が出されれば、『ハイ、了解です』で終わり。恐喝で逮捕されるよりはよほどマシだった。しかし、暴排条例は店が資金を提供することを禁じているため、これまで付き合いのあったカタギがいっせいに離れた」
別の暴力団幹部は、反社排除の実態について語る。「ある日、銀行の代理人の弁護士から電話で、『口座を閉鎖する』と通告があった。反社とは取引しないということだった。口座にはかなりな額が残高としてあったが、現金書留で郵送されてきた。それから自分の名義の口座はない」
この幹部はさらに、「スマホの契約もダメ、車も買えない。賃貸住宅には入居できない。かなり前のことだが、なじみのゴルフ場で仲間と楽しんでいたら、『プレーはここまでにしてください』と中止させられた。反社はダメだということだった」とも打ち明ける。
国内最大の暴力団「六代目山口組」は2015年8月に分裂した。四代目山健組組長の井上邦雄、二代目宅見組組長の入江禎、池田組組長の池田孝志らが中心となり、「神戸山口組」を結成したのもカネが大きな原因とされている。六代目組長に弘道会出身の司忍が就任し、若頭に髙山清司が起用されると、「カネの締め付け」が強化された。
直参と呼ばれる直系組長らは毎月100万円前後を納めていたほか、盆暮れや六代目組長の誕生日には分担して5000万円や1億円を贈っている。当時は反社排除が進むさなかでもあり、山口組の看板を背負っていても傘下組織の組長らは苦境にあった。
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source : 文藝春秋 2023年2月号