軍人は好戦的か

黒江 哲郎 元防衛事務次官
エンタメ 読書

 生涯の仕事として防衛・安全保障を選んだのは、小中学生の頃に戦中派の両親に薦められて読んだ2冊の本の影響だったように思います。1冊目は、小学生の頃に読んだ少年少女向けノンフィクションシリーズの中の『ぼくの村は戦場だった』(アリョーシ等著、偕成社)です。同名の映画もありますが、私が読んだのは独ソ戦の悲惨さをソ連やポーランドの子どもたちの眼から描いた手記を集めたものでした。母親を殺された子どもの手記を読んだ時には、自分がこんな目に遭ったらどんな気持ちになるだろうと思って涙が出ました。現在、ロシアは独ソ戦になぞらえてウクライナを侵略していますが、破壊されたウクライナの街並みをテレビで観る度にこの本に載っていた子どもたちの手記を思い出し、やり切れない気持ちになります。

黒江哲郎・元防衛事務次官 ©時事通信社

 太平洋戦争中、私の母は浅草に住んでいました。「朝、学校へ行く道で、昨日までそこにあった民家が爆撃でなくなっていることが珍しくなかった」といった話をよく聞かされたものです。そんな母から中学生の時に薦められたのが、『東京大空襲』(早乙女勝元著、岩波新書)でした。昭和20年3月10日未明の東京大空襲の模様を記録したもので、母は実際にこの空襲に遭い、九死に一生を得ていました。母の話も重なり、ごく普通の人々の平穏な日常が一瞬で永遠に失われるという戦争の理不尽さについて、中学生なりに深く考えさせられました。

有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。

記事もオンライン番組もすべて見放題
初月300円で今すぐ新規登録!

初回登録は初月300円

月額プラン

1ヶ月更新

1,200円/月

初回登録は初月300円
※2カ月目以降は通常価格で自動更新となります。

年額プラン

10,800円一括払い・1年更新

900円/月

1年分一括のお支払いとなります。
※トートバッグ付き

電子版+雑誌プラン

12,000円一括払い・1年更新

1,000円/月

※1年分一括のお支払いとなります
※トートバッグ付き
雑誌プランについて詳しく見る

有料会員になると…

日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事、全オンライン番組が見放題!

  • 最新記事が発売前に読める
  • 毎月10本配信のオンライン番組が視聴可能
  • 編集長による記事解説ニュースレターを配信
  • 過去10年6,000本以上の記事アーカイブが読み放題
  • 電子版オリジナル記事が読める
有料会員についてもっと詳しく見る

source : 文藝春秋 2023年5月号

genre : エンタメ 読書