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室橋 裕和 ライター

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 ネパールの総菜を売る八百屋とハラルショップと中国・蘇州の麺を出す食堂が並ぶ通りの裏手に、新しくベトナムの食材店ができた。と思ったらそのすぐ先に、ミャンマーの食材店がオープンしたのを見て、僕は唸った。もはやどこの国なのかわからない。道行く人々の顔立ちも、話している言葉もさまざまだ。

 ここ東京・新大久保はよくコリアンタウンと呼ばれるが、それはあくまで一面の姿にすぎない。ネパール人が集住する「リトル・カトマンズ」でもあるし、日本語学校が密集し多様な留学生が行き交う街でもある。

大久保のイスラム横丁 Ⓒ時事通信社

 僕はこの人種のるつぼに住み、外国人たちと近所づきあいをしながら暮らして7年ほどになる。アジアの雑然とした雰囲気が肌に合っているわけだが、外国人たちのパワーをさらに感じるようになったのは、コロナ禍以降のことだ。

「いまなら空いてる店舗たくさんあるよ。外国人お断りだったビルも、貸してくれるように変わってきてる」

 そんな話を知人のネパール人から聞いた。コロナ禍で撤退した日本の店のあとに、外国人がどんどん入居していく動きが広がっていたのだ。コロナ以前は外国人NGだったテナントやビルのオーナーも、日本人の借り手が少なくなったのか、そうも言っていられなくなったらしい。日本人はあの厄災を危機と捉えて守りを固め、新しいビジネスに挑戦していくような動きは鈍かったが、新大久保の外国人たちは逆にチャンスと受け止めた。ここぞとばかりに資金をかき集め、路面店を確保しようと躍起になった。

 その差が、街並みにもよく表れている。ほんの数年で、食材店や美容院や送金屋やカラオケなど外国人の店が一気に増え、街の色どりはさらに賑やかに、あるいはごちゃついたものになった。回転寿司が撤退したテナントを素早く確保し、ハラル食材店を開いたバングラデシュ人は言う。

「ここはビジネスチャンスの街なんですよ」

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source : 文藝春秋 2024年11月号

genre : ライフ 社会 国際 ライフスタイル