パッションを尊重する教育へ

改革リーダー6人の提言①

西川 徹 プリファードネットワークス代表取締役 最高経営責任者
ニュース 社会 経済 教育

アベノミクス、一億総活躍、資産所得倍増など、この十数年、さまざまな経済対策が講じられたが、長期で見れば、人材の育成こそ最も有効ではないか。AI、半導体から建築、金融まで、「ものづくり大国」再興のために必要な教育とは──

 AIの劇的進化により人間が学ぶべき領域や人材教育の方向性が大きく変わりつつある。肌感覚としてそう感じます。誤解を恐れずに言えば、遠くない未来、「これまで通りの勉強に意味がなくなった世界」が来る。知識を詰め込む教育は不要になるはずです。

 ひとつ言えるのは、コンピューターサイエンスへの理解はますます必要不可欠となっていくということです。なぜなら、コンピューターサイエンスこそが、現代における革新の原点だからです。

 私が経営しているプリファードネットワークス(以下、PFN)は、最先端のコンピューターサイエンスを核に、いろんな分野の知見を混ぜ合わせ、現実世界の複雑な課題を解決するという会社です。

 たとえばAIとロボットを組み合わせて、自宅などで使える小型搬送ロボット「カチャカ」を作ったり、AIと化学を組み合わせて、新素材を素早く探索する材料シミュレーター「マトランティス」を開発したりしました。

 コンピューターに魅了されたのは小学4年生の時。父親が借りてきたプログラミング入門書を読んだことがきっかけです。小学生の間はパソコンを買ってもらえず、紙の上にプログラムを書いて遊んでいました。中学でパソコン部に入部し、シューティングゲームなどを作り始めました。当時のOSはまだウィンドウズ3.1という時代で、パソコンの性能も非常に低かった。それを工夫してプログラムを高速化したりするうちに、コンピューターの仕組み自体に興味を持ちました。大学は「半導体からパソコンを作る授業」があると聞いて、東大理学部情報科学科に進学しました。ずっと「パソコン少年」だったんです(笑)。

西川徹氏 Ⓒ文藝春秋

 2006年、大学院在学中に、プログラミングコンテストの世界大会に出場したチームのメンバーや大学時代の同級生と一緒に、PFNの前身の会社を創業しました。当初は検索エンジンの会社でしたが、その後、ディープラーニングの進展に衝撃を受け、2014年にPFNとして改めて立ち上げました。

有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。

記事もオンライン番組もすべて見放題
初月300円で今すぐ新規登録!

初回登録は初月300円

月額プラン

初回登録は初月300円・1ヶ月更新

1,200円/月

初回登録は初月300円
※2カ月目以降は通常価格で自動更新となります。

年額プラン

10,800円一括払い・1年更新

900円/月

1年分一括のお支払いとなります。
※トートバッグ付き

電子版+雑誌プラン

18,000円一括払い・1年更新

1,500円/月

※1年分一括のお支払いとなります
※トートバッグ付き

有料会員になると…

日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事が読み放題!

  • 最新記事が発売前に読める
  • 編集長による記事解説ニュースレターを配信
  • 過去10年7,000本以上の記事アーカイブが読み放題
  • 塩野七生・藤原正彦…「名物連載」も一気に読める
  • 電子版オリジナル記事が読める
有料会員についてもっと詳しく見る

source : 文藝春秋 2025年4月号

genre : ニュース 社会 経済 教育