AI時代の生命科学と「知」の在り方

清水 秀幸 東京科学大学教授
ニュース テクノロジー サイエンス 医療

 生命現象は、ゲノム、タンパク質、代謝物といった多数の要素が織りなす、驚くべき複雑性を有するネットワークによって成立している。そこには、人間の直感だけでは捉えきれない無数の相互作用やパターンが潜んでいる。それゆえ、近年の生命科学は必然的に膨大なデータを扱う学問となり、さらに人工知能(AI)が登場したことで状況は一変しつつある。複雑なデータ群の中から法則性を見出し、新たな仮説や設計を創出するAIの能力は、生命の深遠なる謎を探求し、応用する上で、まさに待望久しい力であったのだ。

 その画期的な象徴が、2024年のノーベル化学賞を開発者が受賞したAlphaFold2である。生命活動の主要な担い手たるタンパク質の立体構造を、アミノ酸配列情報から高精度に予測するという、長年の科学的難問をAIが解き明かした意義は大きい。これにより、これまで構造が未解明であった多数のタンパク質の機能推定や、それらを標的とした創薬研究などが、劇的に加速される道が開かれた。基礎研究から応用展開に至るまで、その恩恵は計り知れないものがある。

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source : 文藝春秋 2025年6月号

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