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2020/09/18

 また、理系の実験科学分野では「共通機器整備」の拡充が必要だ。研究機器、特にある程度高額の機器導入において、アメリカや中国のしくみと日本とで大きく違う点として、日本では、大学や専攻単位で導入するのではなく、個々の研究室がそれぞれの研究費において導入することが多い、という点がある。

 高額な機器はおいそれと購入できるものではないので、日本の若手や中堅の研究者が新しく研究室を立ち上げる際の大きなハードルになっているといえよう。また、場合によっては隣同士の研究室で似たような高額機器を買っているようなケースもあり、研究費の効率使用という観点からみても問題と思われる。

 それに対して、中国ではいわゆる競争的研究資金から高額の実験機器を買うことはあまりない。たとえば、うちの学院では大学着任時に支給されるスタートアップ予算や「国家重点実験室」という共通機器整備のための国からの支援によってそれら必要な機器を確保することが多い。

 特に後者の「国家重点実験室」については、中国がまだ経済的に厳しかった1984年から続いている共通機器整備支援の制度で、お金がない時代だからこそお金をうまく使おうという知恵が反映された制度だと感じる。

日本の政府主導のプロジェクトの多くは「5年時限」

 最近日本でも文科省から共通機器整備に向けた動きがはじまりつつあり、非常に良い流れだと思う。ただ、そのような日本の政府主導のプロジェクトの多くは「5年時限」であることが多く、「時限プロジェクトが終わると機器は補修もされず、野ざらしになる」ということもある。よって、日本の新しい取り組みが、以前のような短期的なものではなく、中国における「国家重点実験室」のような地道かつ継続的な取り組みとなることを願っている。

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 以上をまとめると、私の提案としては「各研究室への校費の額を回復させる」「大学院生への経済支援を拡充し、学生さんが安心して大学院進学できる環境を提供する」「共通機器整備制度の拡充により、研究室単位で高額機器を買わなくても研究できる体制を整える」というものだ。

 これらがもし実現すれば、日本の多くの大学における研究の裾野は大きく広がり、日本の大学、特に地方の大学が再び元気を取り戻すことにつながると信じている。

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