国内では「欧米が自国優先のルールを作っているに過ぎない」といった不満を聞くことも少なくないが、すでにESG(環境・社会・企業統治)投資など、金融市場のルールもシフトし始めており、気候変動への対応を怠ることは経営面での一大リスクになり始めている。
一方で、冒頭のレノバのように、いち早く世界の潮流に気づき、新たな取組を始めた企業にはそれだけのマネーが集まるようになった。つまり、気候変動はリスクをもたらすだけでもなく、その裏側で大きなチャンスも生み出しているということだ。
世界ではすでに、冒頭のグリーン・ジャイアントや米テスラのようなEV企業だけでなく、あらゆる分野で脱炭素の文脈で飛躍を遂げる企業が出始めている。特に顕著なのは、ゲップやおならを通じて温室効果の高いメタンガスを排出する牛を代替する食産業の台頭だ。
2022年は試金石の年
2021年はオーツ麦の「ミルク」を手掛けるオートリー(スウェーデン)が上場し1兆円近い時価総額を維持するほか、「植物肉」のインポッシブル・フーズ(米)も近々上場するとみられている。ビル・ゲイツは「植物肉はすでに味もコストも競争力がある。最貧国のことを考えると、将来的には先進国は100%人工肉に移行すべき」とまで発言している。
しかし、日本では、こうした脱炭素シフトをチャンスに変えている企業の事例はまだまだ少ない。今や、エネルギー産業や自動車だけでなく、農業、鉄鋼にセメントまで、ありとあらゆる産業で抜本的なCO2削減が求められている中、企業が変革を進めるのは遅すぎることはあっても、早すぎることはない。2022年は日本からどれだけグリーン・ジャイアントが登場するかの試金石の年となりそうだ。
※本稿が執筆されたのは2021年10月です。
◆このコラムは、政治、経済からスポーツや芸能まで、世の中の事象を幅広く網羅した『文藝春秋オピニオン 2022年の論点100』に掲載されています。