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広告は95%の人たちに無意味、無用

 それもこれも、駅のような公共の場所でこのような広告を掲載するのは適切かというお気持ちの問題にならざるを得ず、他方で、多くの人たちの目に触れてナンボの広告においてその表現が適切なのかというレギュレーションの問題は尽きません。

 というのも、今回の『雀魂』も『咲 -Saki-』も、そういうものが好きな人たちから支持されるコンテンツではあるものの、あのストレートな萌えとエロの微妙なギリギリのバランスを保っている部分は、興味のない層からすれば「ギリギリどころかアウトやがな」というラインであり、議論になるのも当然です。

 広告である限り、ほとんどの大阪駅を通る人たちからすれば、この広告は「お前は対象じゃない(Not For You)」です。多く見積もっても5%ぐらいしか興味を持たない広告は、95%の人たちからすれば無関心か、批判的な態度でとらえられることもまた多くあります。これは、逆の立場としてジャニーズ系や韓国系のアイドルが広告に掲載されても、刺さらない人からすれば意味のない広告としか感じ取れません。

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 そして、広告という観点からは、興味のないNot For Youの対象からすればただのスパムであり、受け取り次第ゴミ箱直行となります。それでもスパムが横行するのは、刺さる数%の人に買ってもらうために大多数の興味のない人の目にも触れる必要があるからです。ウェブサービスでは特に、大きく広告を打って収益を確保するためには、広告を広く読者や利用者に見せなければならず、スマホでもPCでもウザくないレベルでいかに関心を持ってくれるわずか数%の見込み客に見せるかが生命線となってくるのです。

©iStock.com

問題表現の方が宣伝につながるというパラドックス

 広告系の有識者は、必ずこう言います。「ウザくない、問題ない表現の広告にします」と。

 でもですな。見られてナンボ、話題となって初めて価値のある広告の分野からすると、過激な広告を見て騒いでくれればくれるほど、大阪駅とはゆかりのない、本来ならば広告のターゲットになっていない人たちにまで、この『雀魂×咲』のコラボ企画が届くようになるのです。

 献血で『宇崎ちゃんは遊びたい!』起用が揉めた際も、まったく無関係の私も「そういえば最近『宇崎ちゃん』読んでないな」と買い求めるなど、むしろ話題になってしまったり、久しぶりに献血行くかという行動を促したりします。つまり、問題表現だと皆さんがSNSなどネットで問題提起をして盛り上がるほど、本来届かなかった層にまで告知効果が出てしまうので、むしろこれらを挑発的に扱ったほうが宣伝としては成功してしまうというパラドックスが発生するのです。