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といっても、鉄道が通っていないので富田林から1時間に1本ほどのバスで目指す

 といっても、千早赤阪村には鉄道は通っていない。公共交通でのアクセスとなれば、バスを使うほかない。玄関口になるのは、近鉄長野線の富田林駅だ。

 

 大阪阿部野橋駅から準急に乗って30分弱。コロナ禍以降中止が続いているが、かつてはPLの花火大会が夏の風物詩だった富田林。そのターミナルの駅前広場には、「楠氏遺跡里程標」と書かれた大きな石碑が立っている。

 

 楠氏とは、言うまでもなく楠木正成とその一族。石碑の古めかしさから察するに、昔から富田林が千早赤阪村の玄関口なのだろう。

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 さっそく、バスに乗ろう。富田林駅前と千早赤阪村を結ぶバスは、だいたい1時間に1本ほど。駅前から終点の千早赤阪村立中学校前まで、20分ほどで結んでいる。富田林市と千早赤阪村、そして太子町と河南町の4市町村によるコミュニティバスだ。

 実は、このバスはもともと金剛バスという地元のバス会社によって運行されていた。しかし、運転手不足といういまの日本の現状を象徴するかのような理由によって昨年に廃業。

 バス路線もそのまま消滅してしまっては公共交通がなくなるという一大事に直面した4市町村が、コミュニティバスに引き継いで運行を維持したというわけだ。

 

 このあたりはメディアも賑わしていたから、記憶にある人も少なくないのではないか。いずれにしても、存亡の危機に瀕した千早赤阪村への大動脈は、かろうじて命脈を保ったのである。

 そんな蜘蛛の糸のようなバスに乗る。なんのことはない平日の真っ昼間。だからお客は少なくてとうぜんだ。そのわずかなお客も富田林市郊外の住宅地を走っているうちにパラパラと降りてしまい、千早赤阪村まで乗り通すお客はほかに二人だけ。そのうちひとりは、ハイキング姿に身を包んでいた。千早赤阪村を起点に、金剛山の山登りをするのだろうか。

バスに揺られること20分…いよいよ村が見えてきた

 

 そうして20分ほどバスに揺られ、ゆったりと坂道を登っていくと千早赤阪村だ。村の北西端、金剛山西麓のなだらかな傾斜地から、いよいよ本格的な山道に入らんとする、その境目あたりの村の中心市街地をバスは走る。

 これまで、東京や神奈川での唯一の村をはじめ、いくつかの村を訪れてきたが、それらと比べても心なしか市街地の密集度が高いような気がする。まさに村の本質はもっと奥まった山奥にあり、ということなのだろうか。