手練れの業界ウォッチャーが、新聞報道にもの申す!
★池田大作死去報道は読売圧勝
世の中に強い影響を与えた人物の死去を報じる翌日の朝刊には各社の力量がにじみ出る。創価学会の池田大作名誉会長の死去が発表されたのは土曜日の11月18日。池田氏が創設した公明党、連立を組む自民党の取材は平日に比べるとハードルが高い。このことを前提に分析する。
朝日の翌19日朝刊では三面の「陰る集票力 支柱失い追い打ち」が光った。「『政教分離』を意識し、表立っては平静を装う議員が多い」とする一方、一皮むけば公明議員には懸念が広がっていることを指摘。ベテラン議員の「なんと言われようが池田先生が支柱であったことは間違いない。選挙戦への影響はある」とした言葉は実に生々しい。死去の数日前に公明幹部が口にしていた「名誉会長が亡くなれば衆院小選挙区の撤退論も起きるかもしれない」という言葉は朝日独自の視点だった。それに比べて、いただけないのは社会面の「評伝」。池田氏の来歴を紹介しただけでウィキペディアと変わらない。読んだ後に「時間を返せ」と言うべき、つまらなさだ。
日経五面の「評伝」は読み応えがあった。「先の戦争の荒廃から立ち直ろうと懸命だった日本人の『よりよく、豊かに生きたい』という欲望にかたちと目標を与え」たとした上で「創価学会を実質的な“池田教”と言われるような一枚岩の体制につくり上げた」とし、日蓮宗をベースにしながらも「創価学会=池田氏の個人崇拝」の実態を「池田教」の3文字に込めた。一方で、同じ面の公明の記事は淡泊そのもの。公明幹部の声は「党勢に影響するかもしれない」だけで、「影響するかも」なんて素人でも言える。政治部記者はこんな日も休んでいたのか。
質量とも他を圧倒したのは読売だった。死去のストレート記事を一面アタマにしたのは主要な全国紙では読売のみ。三面の特集記事「スキャナー」でも扱った。「公明は、池田氏の敷いた『福祉』や『平和』を重視する路線を守っている」とし、「安全保障政策では、公明は『ブレーキ役』を自負してきた」と、公明の「平和」路線はいまだ健在との評価を下した。それは「池田氏が結党時に掲げた『平和』の金看板は、次第に変質していく」と書いた朝日とは対照的。「平和」をめぐっては両紙の思想がにじむ。
とりわけ読ませたのは、四面の「評伝」。01年に池田氏にインタビューした元政治部記者は「残念ながらインタビューの内容はあまり記憶にない」と率直に記しつつ、創価学会が戦後日本において果たした役割について「極右にさせなかった。極左にもさせなかった。平和に対する大きい貢献をした」と語った池田氏の言葉は両極に分かれる現在の日本政治のあり方を考えさせられる。
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