安堂ホセ「DTOPIA(デートピア)」(第172回 2024年下期)

円城 塔 作家
エンタメ 読書 芥川賞

 自作について、一番を選べと言われたら、最新作です、と答えたい。文芸が変化していくものである以上、やっぱりそうあるべきではないか。

 といった事情は賞においても似たところがあるはずで、芥川賞では特に、時事とお祭り騒ぎの側面がある。一緒にノれるかノれないか、ノれないとしても、ノれないことにノっていけるか。

安堂ホセ氏 Ⓒ文藝春秋

 そのあたりのスタイルは色々あるが、やっぱりそろそろ、受賞作は本当につまらないものばかりだと肩をすくめるポーズを決め続けるというのもきびしくなってきているのではないか。

 実際、読めば面白いのに。

 とはいえやっぱり芥川賞は直木賞とは違っているから(同じなら同じ賞でよいではないか)、読み方に多少の前提は要る。バッテリー同梱でとりあえず取り出したらいきなり動く、という代物なのかはわからない。読み方がわからない、ということがまま起こる。

 こと芥川賞受賞作に関しては、最初の部分を読んでわからなかったら、そこで引き返していいと思う。

『DTOPIA』(河出書房新社)

 といったところで「DTOPIA」の開幕部分はこうだ。「どっかの金持ちが美男美女を招集して、南の島で恋愛ゲームを開催する」

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source : 文藝春秋 2025年9月号

genre : エンタメ 読書 芥川賞