《帰省が憂鬱な、すべての「子ども」に読んで欲しい》「オヤジとおふくろ」特集から学んだ「親への葛藤」との向き合い方

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「文藝春秋」の編集者が明かす、電子版限定の“ここだけの話”

「いったい、いつになったら帰省するの?」――この時期親からのLINEを見ると、本当に憂鬱になります。

 地元関西から東京に出てきて10年ほどたちました。昔みたいに大阪駅で関西弁の会話を聞くだけで気分が悪くなるようなことはなくなったけれども、それでも帰省前の暗い気持ちはいまだ変わりません。地元にいると、東京に出てくることで距離を取れるようになったもの――昔の自分や友達、そして親――に、否応なしに向き合わないといけないからです。ただ、10年も経つと、やり過ごす方法も少しずつ身についてきました。まず、物理的に距離を取るだけじゃなく言葉で距離を取る。「人に語る」ことで、自分の中で昔の出来事が整理されて、「いまの自分」と切り分けられます。今回「オヤジとおふくろ」特集を担当する中で、さらにもう一つ方法を発見しました。語るだけじゃなく、人の語りを聞くことにも、けっこうな効き目があるようです。人がどのように親と向き合っているのかは、振る舞いの参考になるし、自分の気持ちに名前をつける手がかりにもなるのです。

 物理学者の村山斉さんに依頼を差し上げた際、村山さんは「親が自殺しているので、どうやっても暗い話になりますが、それでも大丈夫ですか?」と心配されていました。ただ、暗くなりうることは企画趣旨として織り込み済み。それに、読者にも同じような境遇の方はいらっしゃるはずで、そんな人を勇気づける内容になるのではないかと考えていました。いただいた原稿を拝読して、「やはり間違っていなかった」と思いました。

村山斉氏 ©文藝春秋

 参政党代表の神谷宗幣さんにご登場いただいたのは、文藝春秋PLUSの動画にご出演いただいた時にぽろっと「20代が本当に苦しかった」と話されていたことがきっかけの一つです。今回伺ったのは、神谷さんにとってつらい思い出の話です。いつも笑顔が印象的な神谷さんですが、一瞬見せた暗い表情が忘れられません。

神谷宗幣氏。参議院議員会館にて ©文藝春秋

 取材場所も語り口も神谷さんと対照的だったのが玉袋筋太郎さんです。なんとご自身が経営する「スナック玉ちゃん」にて、スナックの営業前にお話を伺いました。玉袋さんは当然のようにビールの小瓶を開けながら話を始めました。「そんなに飲んで大丈夫なのかな?」と内心ドキドキしていたのですが、結果は完全な杞憂でした。内容はやはり重たい。ですが、飲めば飲むほど弁舌滑らかで、エピソードがあふれでました。取材が終わる頃には瓶が4本ほど空いていました。

玉袋筋太郎氏 ©文藝春秋

 もう一つ、今回の特集で印象的だったのが、現役を引退したばかりの湊川親方(元大関・貴景勝)です。実は、彼と私は小学校のクラスメイトなのです。私の記憶にあるのはおちゃらけて元気な親方の姿ですが、原稿に書かれているのは小学校のときからの葛藤や苦労。見えていなかったものがあったと唸りました。親方も親との距離について悩み、そして乗り越えようとしているようです。同世代としての親近感を覚えました。

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