中村弘行「ものと人間の文化史 190 寒天」

文藝春秋BOOK倶楽部

本郷 恵子 東京大学史料編纂所所長
エンタメ 読書 グルメ

貢納品から健康食品へ

「ものと人間の文化史」は、1968年から刊行を開始し、今日までに190書目・218冊(1書目が2〜3冊にわたることがあるため)を世に問うている息の長いシリーズだ。さまざまな「もの」について根源から問い直し、「もの」とのかかわりにおいて営々と築かれてきた暮らしの具体相を通じて歴史を捉え直す――というのが刊行の趣旨である。「船」「化粧」「はきもの」など、「あら、知りたかったのよ」と膝を打つテーマのほか、「猿」「熊」「松」「紅花」などの動植物系、「もののけ」「つぶて」などの、ちょっと見当をつけにくい対象にいたるまで、実に多くの「もの」の来歴があきらかにされてきた。なかでも食べ物は、とりあげられる頻度が高い部類だが、最新刊の『寒天』には「うわ、そうきたか」と意表を突かれた。あんみつの中で透明な輝きを放ち、固体とも液体ともつかない不思議な食感で訴えてくる寒天について、この機会にぜひ親しみを深めたい。

中村弘行『ものと人間の文化史 190 寒天』(法政大学出版局)3300円(税込)

 テングサ属のマクサ等の海藻を煮詰めて(煮熟〔しゃじゅく〕)漉し、冷まして固めたのがトコロテンだ(これを天突きで突いて麺状にし、酢醤油や黒蜜をかけて食べる)。さらに、トコロテンを凍結、融解、乾燥(フリーズドライ)させたものが寒天となる。テングサは個別の海藻名ではなく、「属」「科」「目」という、より上位の分類カテゴリーであるとか、トコロテンにさらに工程を加えて、ようやく寒天ができるなど、最初から知らなかったことばかり。

有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。

記事もオンライン番組もすべて見放題
新規登録は「月あたり450円」から

  • 1カ月プラン

    新規登録は50%オフ

    初月は1,200

    600円 / 月(税込)

    ※2カ月目以降は通常価格1,200円(税込)で自動更新となります。

  • オススメ

    1年プラン

    新規登録は50%オフ

    900円 / 月

    450円 / 月(税込)

    初回特別価格5,400円 / 年(税込)

    ※1年分一括のお支払いとなります。2年目以降は通常価格10,800円(税込)で自動更新となります。

    特典付き
  • 雑誌セットプラン

    申込み月の発売号から
    12冊を宅配

    1,000円 / 月(税込)

    12,000円 / 年(税込)

    ※1年分一括のお支払いとなります
    雑誌配送に関する注意事項

    特典付き 雑誌『文藝春秋』の書影

有料会員になると…

日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事、全オンライン番組が見放題!

  • 最新記事が発売前に読める
  • 毎月10本配信のオンライン番組が視聴可能
  • 編集長による記事解説ニュースレターを配信
  • 過去10年6,000本以上の記事アーカイブが読み放題
  • 電子版オリジナル記事が読める
有料会員についてもっと詳しく見る

source : 文藝春秋 2023年11月号

genre : エンタメ 読書 グルメ