日本を震撼させた平成の凶悪事件。事件後に流れた歳月は犯人・遺族の心境にどのような変化をもたらすのか。ノンフィクションライター、小野一光氏が現場を歩く。今回は「平成21年 島根女子大生バラバラ殺人事件篇」の第3回。
■連載「平成凶悪事件と『その後』」
【平成17年】 大阪姉妹連続殺人事件篇
【平成15年】福岡一家4人殺人事件篇
【平成18年】秋田児童連続殺人事件篇
【平成16~17年】福岡3女性連続強盗殺人事件篇
【平成6~12年】中洲スナックママ連続保険金殺人事件篇
【平成21年】平成21年 島根女子大生バラバラ殺人事件篇
#1 バイト先から学生寮までの夜間の人気のない山道で起きた惨劇
#2 捜査は7年も続いたが、犯人は遺体発見の2日後に死んでいた
#3 「無駄な捜査は一つもなかった」と総括した警察 この記事
2009年11月に島根県浜田市に住む島根県立大学1年生、Aさん(当時19)のバラバラに切断された遺体が、広島県の臥龍山で発見された事件は、それから7年後の16年12月20日に、島根県益田市の会社員・矢野富栄(よしはる=死亡時33)を書類送検したことで、長年続けてきた捜査に区切りがつけられることになった(被疑者死亡で不起訴)。
矢野は山口県下関市出身で、同市内の住宅設備会社に勤務。そこで益田市にある一軒家を勤務先の社宅兼事務所として借り、島根県西部を中心にソーラーパネルの営業をしていた。その営業範囲には、浜田市も含まれていたという。
捜査第一課長による記者会見
島根・広島県警の合同捜査本部は、矢野の書類送検を受け、同日の午前11時から記者会見を開いている。この会見は2時間以上続いたが、ここでは質疑応答の一部を抜粋して、島根県警の捜査第一課長と記者たちのやり取りを紹介したい。なお、捜査第一課長を「A」とし、記者たちは複数名いるが、すべて「Q」とする。

Q「事件の捜査の経緯、送検の決め手はなんでしょうか? あと、なぜ7年もかかったと思われますか?」
A「犯人の特定、決め手、7年については、この事件は被害者がX(アルバイト先のショッピングセンター)を出て以降、目撃情報がなく、死体の遺棄現場以外の現場が判然とせず、犯人の目的、動機が不明でありました。あらゆる観点で捜査を進めています。素行不良者を抽出し、島根県、広島県を中心に、その後、隣接県へ捜査を進め、年月を積み重ねた捜査資料や情報の組み合わせで被疑者の容疑性が高まった。浮上した被疑者の情報や部内の情報と組み合わせて、容疑性が一層高まり、捜索差押令状により、証拠収集、関係者からの事情聴取を行った結果として、被疑者を特定してきた。(中略)差し押さえ、デジタルカメラやUSB(メモリ)を押収し、被害者のご遺体や包丁が撮影されていることが大きな決め手となった」
この捜査第一課長の説明によって、遺体や解体に使用した包丁を撮影した画像データがあることが判明する。
Q「矢野が(被疑者として)認定されたのは、何がきっかけでしたか?」
A「有力な証拠が出た時点。被疑者として浮上した時期は捜査の内容になるので、申し上げられません」
Q「(Aさんの遺体発見の)2日後に事故死した状況で、早期に(被疑者として)浮上しない理由はありましたか?」
A「被疑者について浮上した経緯、捜査の始期は申し上げられません」
Q「多くの被疑者がいるなかで、矢野はかなり前から被疑者の中に入っていましたか?」
A「それも捜査の始期に関わるため答えられません」
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