2025年に発売された月刊文藝春秋の膨大な記事の中から、好評だった特集記事を紹介します。
ハチャメチャな魅力で戦後をリードした人物の素顔に迫る大特集「戦後80年の偉大なる変人才人」。甲冑姿にゴム長靴の装いで、数々の選挙に立候補した羽柴誠三秀吉氏(本名・三上誠三)について、次男の三上大和氏が語る「羽柴誠三秀吉 17回の選挙」から一部抜粋します。
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家庭でも「怒りの人」だった
怒りだすと手がつけられない人でした。父が亡くなった後、税務署の担当者が菓子折りを持って訪ねてきました。税務署員が手土産? と驚いていたら、父を「羽柴さん」と呼ぶ。聞けば、生前に「三上さん」と本名で呼びかけ、父にブチ切れられたそうです。さらに手ぶらでは会ってもらえなかったと。よほど怖かったのでしょうね。
家庭でも、父がいると空気がピリピリしました。幼い頃、僕が泣きやまないと、父は腹を立ててトラの檻まで引きずっていきました。家で生きたトラを飼っていたのです。檻に顔を押しつけられた瞬間、死ぬと思いました(笑)。
父が初めて選挙に立候補したのは1978年、青森県金木町(現・五所川原市)の町長選でした。まだ20代で、本名で立候補しています。
そもそも金木町長をめざしたのは、青函トンネルの工事で、地元の土木関係者から締め出されたことが関係したかもしれません。
貧しい農家に育った父は、中学を卒業すると製材工場で働きました。職を変えながら蓄えて21歳でダンプカーを1台買い、生コン業者に石材を運んで納入する仕事をはじめます。ダンプと仲間を増やすうちに、青函トンネル工事の運送業務を受注しました。個人の運送業者が飛び込み営業で大プロジェクトの仕事を受注したのです。当然、地元の会社はおもしろくありません。父は青森県内で運搬する石材を売ってもらえなくなり、秋田県まで買いにいったそうです。父には、その時の恨みがあったので、町長となって見返してやろうと思ったのかもしれません。
その後、東京都知事選、大阪府知事選、長野県知事選、衆院選とエスカレートしていった理由は不明です。父は仕事や選挙について家族には語りませんでした。余計なことを言うと怒りだすから、僕たちも尋ねませんでした。
そもそも、羽柴秀吉を名乗りだしたのは20代半ばから。お寺の住職から「豊臣秀吉の生まれ変わり」と言われたからと本人は説明していました。
※本記事の全文(約1600字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」に掲載されています(三上大和「羽柴誠三秀吉 17回の選挙」)。
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■特集「戦後80年の偉大なる変人才人」
小泉純一郎 変人宰相誕生前夜▼田中眞紀子
浜田幸一 東京湾を埋め立てろ▼浜田靖一
佐藤愛子 ゴンタクレの血すじ▼杉山響子
元谷芙美子 帽子は切替スイッチ▼海江田万里
湯木佐知子 今はもう、“ささやき”ができませんねん▼湯木尚二
河村たかし 反乱軍になっちまったでぇ▼小島敏郎
羽柴誠三秀吉 17回の選挙▼三上大和
ドクター・中松 一スジ、二ピカ、三イキ▼中松義成
野村沙知代 あんたら!▼江本孟紀
岡留安則 愛嬌ある脅し▼西岡研介
天本英世 黒マントを翻し▼矢作俊彦
康芳夫 仁義ある虚業家▼島田雅彦
三木武吉 ヤジ将軍の本領▼赤上裕幸
松崎明 革マル派の妖怪▼牧久
武井保雄 艶福の人生▼溝口敦
酒井美意子 ナイトクラブ「不死鳥」▼保阪正康
榎美沙子 ピンクのヘルメット▼田原総一朗
楳図かずお 赤白ボーダーの家▼伊藤潤二
水木しげる おまえ、見たんか!▼原口尚子・武良悦子
赤塚不二夫 タモリへの異常な愛情▼山下洋輔
東海林さだお アタマを毎日100タタキ▼椎名誠
ギャル曽根 お腹触ってみます?▼名城ラリータ
志茂田景樹 青髪の男にゾクリ▼志茂田景樹
加藤一二三 潜んでいる龍▼西口由紀
升田幸三 1日酒2升タバコ200本▼桐谷広人
鈴木清順 やんちゃな仙人▼小椋悟
熊谷守一 毎日、毎日が新しい▼福井淳子
笹部新太郎 桜博士の憤慨▼北野栄三
浪花千栄子 毒を養分とした体幹の強さ▼芝山幹郎
土方巽 どーーんぞいって下さい▼吉増剛造
加藤唐九郎 窯大将の末裔▼加藤高宏
三松正夫 世界最大級の墓▼三松三朗
尾上縫 神のお告げ▼森功
細木数子 言い過ぎたかしら▼細木かおり
鮎川誠 IQ135▼鮎川陽子
植草甚一 印税はNY遊びに▼大谷能生
久世光彦 色っぽい囁き▼岸本加世子
安部譲二 稀代のモテ男▼山田詠美
樹木希林 不動産も好き▼遠藤勝義
谷崎潤一郎 愚という貴い徳▼阿刀田高
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出典元
【文藝春秋 目次】永久保存版 戦後80周年記念大特集 戦後80年の偉大なる変人才人/総力取材 長嶋茂雄33人の証言 原辰徳、森祇晶、青山祐子ほか
2025年8月号
2025年7月9日 発売
1700円(税込)

